イドとペット-アニメ無意識元年?-
今季アニメで「ID:INVADED イド:インヴェイデッド」と「pet(ペット)」は、偶然だとは思うけれどどちらも舞台は人の意識下、無意識領域を扱っている。今期、楽しみで二つとも見てましたね~
この二つ、内容も雰囲気も全然違うのだが、なぜか共通点が多くて興味深い。
どちらも(殺人事件はあるものの)派手なバトルもなく、胸の大きな美少女もなく(紅一点の本堂町ちゃんは…かわいいとは思うけど、ね…)、petにいたってはガラの悪いおっさんがぞろぞろ出てくるっていう(笑)、よく企画とおったなっていう誰得なアニメになっている。
内容もギミックに満ちた謎解きに人間関係やらが絡んでけっこう複雑。
だからこそ奥が深くて面白いのだが、今の王道とは言えないアニメでしょう。むしろ挑戦的とさえいえる。
今流行りのアニメといえば、なんといっても異世界転生もの。
異世界転生ものが入ってこないことはないっていうくらい、どうかすると数作がぞろりと異世界転生ものというくらいに人気ジャンルだ。
しかしそろそろさすがにインフレ状態なのではないかと思ったところに、出てきたのがこの「イド」と「pet」。
今季にそろい踏みしたのは偶然なのだろうが、やはり状況的に必然な気がした。
異世界転生ものは、その名の通り異世界に主人公が転生するわけだが、実はその異世界というのは、基本的にこの現実世界とルールが一緒である場合がほとんどだ。
3次元だし、言葉が通じるし、道があって家があって人やら獣やらが生活している。
魔法だののオプションはあるものの、基盤が同じだから、だから私たちも安心して(?)彼らの冒険を楽しめるわけである。
ところがこの「イド」と「pet」はどうだ。
「イド」第一話で、のっけから酒井戸の腕がぶつ切りになっているというシュールさ。
「pet」主人公であるヒロキの金魚と人間が入り混じったようなキャラデザのシュールさ。
そして舞台となる世界は、まさに悪夢の中に入り込んでしまったような、人間の中だというのにもはや人が住めない世界となっている。
見ているこちらも不安定になってくるような映像だ。
しかも、どれもこれも現実のルールを無視した非現実的な世界でありながら、人の内面の表現として納得できる世界観を実現していると思う。
「イド」の(何話だったか忘れた)顔も声も一定しないキャラなんて秀逸だと思った。
夢の中って、いつの間にか顔がすり替わっていたりとか、ありますよね。
しかもこの二つのアニメを見ていて不安定な気分になってくるのは、映像だけではない。
自分の記憶や意思というものの基盤さえこの世界では疑わざるをえないのだ。
つまり異世界にわざわざ行かなくても自分の内面のほうがよっぽど摩訶不思議だということをこの二つのアニメは教えてくれる。
フロイトが「夢判断」をあらわしてから今年がちょうど120年。
無意識を舞台にしたアニメがテレビ放送されようとは、フロイトさんも感慨深いことでしょうね。